第2章 幸か不幸か
「ヴヴゥゥー……ガゥ!!」
『う、うわぁあぁ!?』
「きゃっ!?」
サシャが目を光らせ、暗闇に向かい奇行種のような動きで飛んでいった。怖!!あなた巨人ですかー!
その先で誰かの悲鳴が聞こえた気がする…
「ガル、ガルルルゥ…………
…?こ、これは…パン!!」
正気を取り戻したサシャが口に咥えていたのは、その通りパン。食べ物の察知能力凄すぎ…というかお腹空き過ぎて気絶してたんかーい…
「お腹空いてるだろうなと思って、少しだけど持ってきたの。はい、あなたの分もどうぞ!」
暗い兵舎側の方から出てきたのはクリスタだった。流石女神、私の分まで用意してくれるなんて…慈悲深い…!
『いっいいの!?助かるうぅーっ』
「神!神ぃぃーー!!」
2人してパンを一気に平らげ、疲れが出たのか気絶するように眠りについてしまった───
「お前…いいことしようとしてるだろ?」
ビクッ
ユミルが物陰から出てきてクリスタに声を掛ける。
「そ、そんなこと…!」
「それはこいつらのためにやったのか?お前の得たものは、その労力に見合ったか?
…まあいい、こいつらをベッドまで運ぶぞ」
ユミルは返事を待たず、サシャと私を担ごうとする。
「あ、あなたも良いことをしようとしているの!?」
「…いや、こいつらに貸しを作って恩にきせるためだ。特にこいつの馬鹿さには期待できる…」
ユミルはそう言ってニヤリと笑った後、2人で私達をベッドへ運んだのだった。