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この恋の騙し方/安室

第3章 紫蘭




公道を走る。
避難していた人たちの車もバスももうなく道はガランとしていた

は運転に集中し
降谷は窓越しの夜景を見ながらなにか考えている


話しかけられなかった
真剣な面差しに息をのんだ

もうすぐまた会えなくなるのはわかっていた
なにか危険なことをしているのはわかる。
そんな顔するから


気を逸らすように少しスピードをあげた




警視庁前。


「ぃ………零…?ついたよ。」

なにか考え込む降谷の顔を覗き込み心配そうに声をかける

ハッとした表情とともに目と目が合うがすぐに降谷の方が逸らした

「…少し僕に着いてきてもらえませんか?」

少し俯いたと思ったら顔を上げかたい表情で見られ唾を飲み込んだ。


覚悟は決まってる相手の瞳を見つめて頷いた。




車を停め警視庁内に入る。

いつもと同じ道筋なのに1歩1歩足取りが重く感じる。


「降谷さん!」

デスクワークしていた風見が2人を見かけ走ってきた
はぺこりとお辞儀をする

「風見。横の部屋かりる。こちらに」

隅の整理されているデスクの引き出しから何かをポケットに入れ隣の部屋へ移動する
風見は黙って2人の後ろ姿を見つめていた


「どうぞ」

部屋に案内され温かい珈琲にホッとしながらも気は抜けず黙り込む

降谷は向かいのソファに座り少しの間を見つめた。

「見ない間に綺麗になりましたね…。」


「……へ?」

ものすごく場違いなセリフにポカンと変な声を上げた

「ははは!全く貴女は変わりませんね」

声を上げて笑う。

「もう……ふふっ」

気を張っていたのが不意の言葉に緊張が解れお互い笑った。

気が緩んだのを見計らい降谷は口を開いた。

「もう貴女に遠回しなことは言いたくない…。
協力者をやめるか続けるかどちらにしますか?」

降谷の瞳が光りゾクッと背筋が凍る。

多分
この問いはこちら側に来るのか来ないのか。
だろう…

死ぬかも知れない恐怖は確かにある。
でも…

「やめない。死ぬまでついて行きます。」

微笑み浮かべ深く頷いたのを見て降谷も硬い表情を崩した。

「わかってくれましたね。じゃあ…」

ポケットから名刺ケースを取り出し1枚差し出した
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