第3章 紫蘭
抱きつかれている。
懐かしい香りに包まれ本当に夢の中だと思ってしまう
「もう泣かせない。」
低く響くなにか決断したような声色にドクっと胸が高鳴った。
「零…。ありがとう」
涙を拭い微笑んだ。
その言葉だけでよかった。
やっと会えたね。
ずっと探してたの
言葉を飲み込み感謝だけを伝えた
言いたいこと
伝えたい事いっぱいあるのに言葉が詰まる
会えたそれだけで頭の中が真っ白になるには充分な理由だった
「?」
幸せの中名を呼ばれ我に返る。
「ごめんなさい。」
本来の目的を思い出して名残惜しそうに降谷から離れた。
送り届ける。こと
降谷を探すために協力者になってもうどれだけたつのだろう
そんなことを考えながら手を伸ばし
「立てる?肩いる?」
と問いかけた
一瞬キョトンとし自然と笑った
「ははは…俺がそんなにひ弱く見えますか…?」
降谷零自身心の底から笑う自分に内心驚いたが相手はそれを知らず微笑みながら首をふった
「全然。むしろ昔より逞しくなったね」
伸ばされた腕を引き2人共立ち上がり車へ向かう。
車乗りすぐにはスマホを取り出し素早く電話をする
そんなに掛からず相手は電話に出た
『お疲れ様です。無事出会えましたか?』
「風見さん。降谷さんと無事出会えましたよ!」
『わかりました。後はよろしくおね』
電話の相手を知り報告だと知りつつもなにかが気になり電話を取り上げた
「風見。助かった」
『え?降谷さん!?…いえ。任務お疲れ様でした』
態度を上司用に切り替えるものの
横での「れいー。れーーーい」の声に一瞬驚く。
知り合いを探していると前々から聞いていた。
それが降谷零だとは。
そう思いながらも顔色変えずに応対する
「風見さんごめんなさい。報告は以上です。しっかり送りますね」
スマホが返ってきたのか完結に報告を済ませた。
電話を切り降谷を見ると少し意地悪そうな瞳でこちらを見ている
「零。なにすんの」
笑いながら責める気もない表情で呟きエンジンをかけ車は出発した