第11章 キョウチクトウ
「あの場所…組織の恐ろしさは分かっている。それでも命懸けでしたいことがあるの。」
目だけを動かし安室を見るとなにかを考えているような表情でこちらを見ていた。
「貴女はそれ程まで…。」
少し寂しそうに笑う安室にごめんなさいと口から零れ落ちる
「いつから…?」
「風見さんの協力者になる前から。」
「そうか…わかった。ここへはどうやって?」
「え。電車だけれど…」
「付いて来てくれますか?」
ベンチから立ち上がり安室はに手を差し出した。
微笑む安室に対して少しおどおどしながらその手を取ると勢いよく引っ張られて立ち上がった。
2人とも無言のまま駐車場に入り車に案内され乗り込んだ。
「あ、上着ありがとう。」
運転席に乗り込んだ安室に上着を返す。
と、同時に口をひらいた。
「少しドライブに付き合って下さい」
車を出してトロピカルランドから出てすぐ辺りに運転に集中しながらぽつりぽつりと安室が話し始めた。
警察学校のこと…
友人のこと…
スコッチのこと…
同期はもういないと言うこと。
赤井から聞いたことも含めて苦痛混じりに話している間に誰もいない公園の駐車場に車を止めた。
の手がそっと安室の頬に触れると相手は驚いたように視線をこちらに向けた。
「泣きそうだったから……」
ぽつり、安室を見つめ自然と言葉が落ちる。
「泣きたかったのかもしれません…ね。」
ははっ、と乾いた笑いをした。
「ごめんなさい。もしかしたら私もスコッチと一緒になってしまうかもしれない。
でも、止められないし止まらない。たとえ貴方に言われても私は…」
「貴女は真面目で。
まわりをよく見る人ですが一直線でもあるから。分かってますよ」
の方を向き先程したことと同じく頬に安室の手が触れ瞳が光った。