第8章 ハマナス
どうやって帰ってきたのかそれすら記憶が曖昧なまま
気がつくとセカンドハウスに戻ってきていた。
玄関の重いドアを閉め廊下を歩きながらウィッグやドレス、すべて脱ぎ捨て下着姿のまま
ボサボサの頭でベットに崩れ落ちるように横になり目を閉じた
「………ん…」
薄ら目を開けると香水の匂いが鼻につく
寝ていた…と廊下から漏れる光で時計を見ると9時前をさしていた
ぼーっとしながらメイクを落としてシャワールームに向かった。
ジャーー
いつもより熱いお湯を浴びながら今日あった出来事が鮮明に浮かび1人泣いた。
バーボンが零だったこと
コードネームがあると言うことは暗闇に足を踏み入れた証拠だった
私のように…。
まさか同じ組織にいたなんて
だからあの時安室透と名乗った時の冷たく悲しそうな目はこのためだったのか、とわかった。
それと同時に愛している人につかなければ行けなくなった嘘。
哀ちゃん…。
例え愛している人でもあの子のことはいえない。
思った瞬間に子供たちのことを思い出し無性に会いたくなりシャワーをとめた。
バスローブを身に包み部屋の電気をつけ適当に髪を乾かす。
衣装部屋で動きやすい白いノースリーブのワンピースとピンクのパーカーを着て
トートバッグに必要最低限のものを入れてマンションを後にした。
電車で米花町に向かっている間も無心でただ博士の家へとしか頭になかった。
駅につくといつの間にか雨が降っていてうっとおしそうに上を見上げるものの傘も購入せず歩いていった。
住宅街に着く頃には小雨でも服は結構濡れてしまい徐々に体温を奪う。
無心でぼーっとしながら見えはじめた阿笠博士の家を見上げ安堵から意識を手放した。
「………っと。」
手放す瞬間誰かに抱かれたような気がした…。
貴方…だれ………?