第17章 スパティフィラム
「お疲れ様でした!」
更衣室に向かう途中ナースから次々に声をかけられて微笑みながら会釈し更衣室を目指した
ロッカーをあけてバッグの横に置いていたスマホの光に目が行きみると
沖矢昴から10分ほど前に着信があり更衣を素早く済ませて
かけ直すために駐車場へと早歩きで向かい車に乗り込んだ。
あの東都水族館の一件から1ヶ月経とうとしていたが未だに安室とは連絡を取り合っていない
その事をずっと気にしている。
考えを振り払い折返し電話をかけ相手を待つ
数秒もしない内に相手の声が聞こえた
「久しぶりです。」
沖矢昴の口調に「あ。沖矢昴だ…」と脳内処理したはずが声に出してしまっていて
電話越しから口をお耐えたような笑いが静かに聞こえてきた。
「はは。その様子だと彼とはまだ連絡していませんね…」
「何もかもお見通しみたいに言わないでよ…。で今日は何?
からかいの電話なら…コナン君連れて乗り込むよ」
何言ってるんだろう、と心の中で思いながらも
まぁ、いいかと流す
「えぇ。来てほしいので電話しました、今日あいてますか?」
いきなり過ぎる発言にぽかんとしながらも
何も無いなーと思い二つ返事で引き受け「了解」と返した
通話を終了した後無意識にため息がこぼれ今日何回目かのため息に落胆してエンジンをかけた。
連絡しなきゃ…。
あの時
笑い会えたあの日々には戻れないのだろう。
そう感じる
得たものも
なくしたものもすべては自分の糧になってしまう。
カーディナル
貴女はどうしたいの??
あの時のキュラソーの言葉が頭に響いていた
「受け入れよう。すべてを」
スマホを取り出して“会いたい”とだけ短文で送った。