第8章 ……さよ、なら…?
~紅玉side~
「…紅覇とルナはまだか?」
「今、魔導師たちが呼びに行っていますよ。」
「珍しいですわぁ、紅覇お兄様はともかく…ルナちゃんまでお寝坊だなんて」
「…いや。
紅覇も、寝坊などはめったにしないはずだ。
今日はどうした?」
…本当に、珍しいわぁ。
座っている紅玉と、横に立っている夏黄文は視線を合わせた。
紅炎お兄様も、紅明お兄様も…心配してる…。
表情は変わらないものの、眉間に、わずかにシワが寄っている。
紅玉も、心配でならなかった。
何かあったんじゃ……
「…っ、あの、私──…」
と、席を立ち上がろうとした瞬間。
バンッ!!!
「紅炎様っ!!」
突然、ダイニングルームの扉が勢いよく開いた。
同時に、魔導師が2人、血相を抱えて入室してくる。
「どうした?」
「っ、紅覇様がっ…紅覇様がっ!!」
「「「っ!?」」」
ガタンッ!とイスを鳴らし、紅玉は席を立つ。
唇と両手が、わなわなと震えていた。
「んだよ、紅覇がどうかしたのかぁ?」
「ジュダル様っ…」
完全に寝坊してやってきたジュダルが、欠伸をして魔導師に聞いた。
「っ紅覇様の体調が、優れていないのですっ…」
「熱が高くて、震えています」
「…~っ、紅炎お兄様っ…」
心配でたまらない紅玉は、紅炎の目を見つめる。
「私っ…紅覇お兄様のもとに行ってまいりますわぁっ!!」
「あ、姫っ!!?」
目に涙を浮かべて部屋を出て行く紅玉を、夏黄文は追いかけた。
「…行くぞ、紅明」
「はいはい。」
紅炎と紅明も、席を立ち上がって部屋を出た。