第7章 最悪の事態
「もう、やめてください」
「…ここで何をしているの、白龍?」
真剣な表情で、棒立ちしている白龍が…
紅覇のすぐ後ろに居た。
紅覇もすぐに振り返って、驚く。
玉艶は…黒い瞳のまま、白龍を睨んだ。
「彼女に危害を加えないでください。
あなたのモノではないんですから。」
「…どうして、そんなことを言うの?白龍…」
「当たり前のことを言ったまでです。
彼女は…ルナ殿は、紅覇殿の大切な方です。
手を出さないでと、そう言っています。」
『ハァッ、ハァッ…ケホッ…』
「…紅覇殿も、どうか…刀を納めてください。」
白龍を見つめている紅覇に向かって、彼は手を組んで一礼した。
「今回の母上の失態は、全て…無きものにしていただきたいのです。
もちろん、責任は全て、俺に。」
「…できると思ってんの?そんなこと」
いくら白龍が真剣に喋ったとしても、紅覇は表情を怖くさせるだけだった。
許すわけがない、という感情が
殺気とともに溢れ出ている。
「…お願いします。」
「……」
「白龍…私の可愛い白龍はどこに行ったの?
どうして…弱者などに頭を下げているの?」
「…ここに居ます。
弱者など、ここには誰もいませんよ」
いつの間にか、瞳の色が元色に戻っていた玉艶。
白龍の行動に、驚きを隠せないようだ。
「……とにかく今は、ルナ殿の健康状態を確認するのを優先してください、紅覇殿。」
「……」
「彼女は、だいぶ弱っているはずです。一刻も早く、医務室に。」
白龍に押され、紅覇は少し潤んだ目をルナに向けた。
『ゴホッ…ハァッ』
「……チッ…
わかったよ、…今はルナを優先するぅ。
今はねぇ?」
「…ありがとうございます。」
白龍を一睨みしてから、玉艶の横を通りすぎて
ルナに駆け寄った。