第7章 最悪の事態
楽しく会話をしていた白瑛の前で、猫に戻ってしまったことが、余程のショックだったようで…。
ルナは、うなだれた。
「ルナ殿…元気だして?」
と、白瑛が心配そうな顔を向けたと同時に、白龍が…
「…猫って、可愛いですよね」
『にゃ?』
白龍がルナの、真っ白でふわふわな頭を柔らかく撫でた。
こ…紅覇以外の男の人に、な…撫でられるなんてっ…!!
そんなの嫌だっ!(紅炎や紅明、ジュダルは何故かオーケー)
と、思いつつも…
「あ、喉が…」
「鳴っているわね」
体は正直らしい。
例え、極悪人が猫を撫でようとも…
優しく…柔らかく撫でられれば、猫は喉を鳴らしてしまうのだ。
『~』ゴロゴロ
「…っ…誘拐したくなってきました…」
『うにゃっ!?』
「あら、そんなことをしたら、紅覇殿に殺されてしまうわ?」
「……」
白瑛の言うことは、あながち間違ってはいない。
この間、町に出かけた時…。
ふと猫に戻り、紅覇から離れて彷徨(うろつ)いていたら、
ルナを見かけた少女がルナを抱きかかえ、そのまま連れ帰ろうとする出来事があった。
…あの時は、大変だった。
紅覇が殺意むき出しで、少女に如意練刀を向け…
危うく、少女を殺してしまうところだったのだ。
紅炎が駆けつけ、その場はそれで収まったが…
紅覇は後から、紅炎にこっぴどく叱られて、2日ほど生気を失っていた。
…ルナがキスをしたら、すぐに戻ったのだが。
「あら、そろそろ戻らないと…」
「そうですね」
『?』
「それじゃあ、ルナ殿。またお話しましょう?」
『にゃっ!(うんっ!)』
私に手を振る白瑛と、軽く会釈する白龍は…
2人並んで、その場を去っていった。