第5章 彼女のため
しばらくそうしていると、自分のお腹に、紅覇が口を開いたような感覚が伝わってきた。
すると案の定、紅覇は…言う。
「…ぃ…た、い……?」
『ぇ…?』
遠慮がちに、ゆっくりと顔をあげる紅覇。
つられてルナも、目線をしたに下げた。
やがて、紅覇とルナの視線が絡み合う。
『……』
「……」
よりいっそう静かになった寝室──。
2人の鼓動の音だけが、聞こえてきそうだった。
切ないような…また泣き出しそうな表情の紅覇と…、
紅覇の意外な発言に驚き、目を見開くルナ…。
「…ルナ…、」
『ッ…』
ピクリと肩が揺れる。
「…痛、かった…?」
少しだけ目を細めて、うっすらと涙を滲ませ……
囁くように喋った。
『…っ……ちょ…と、だけ…ね…?』
紅覇の心を和らげようと、優しく微笑んで見せる。
ポツ…と、涙がこぼれ落ちた。