第5章 彼女のため
泣きじゃくるルナを落ち着かせる紅玉。
ルナが落ち着きを取り戻したところを見計らって、
紅玉は自分からルナをそっと引き剥がし、口を開いた。
「ルナちゃん、あまり"ここ"をお散歩しなかったのねぇ?」
『グスン…どういうこと…?』
「毎日お散歩をしていれば、勝手に道を覚えるのよぉ。出歩かないから、迷ったんだわぁ」
確かに、紅玉の言うとおりかもしれない。
ルナは、今までずっと紅覇と一緒だった。
出歩くときはいつも紅覇がいて、1人で出歩いたことがないのだ。
紅覇の頭に乗っていれば、目的地に勝手に着くため、宮廷内の道を覚えようとしなかった。
『…なんでこんなに広いのぉ…』
ふにゃりと顔をゆがませ、また泣こうとする。
でも、紅玉はそれを止めた。
「ルナちゃん、」
『にゃ…?』
「私が、紅覇お兄様のお部屋に連れていってあげる。」
『っ!ほんと!?』
「ええ。だから…今度いつか、2人で宮廷内をお散歩しましょう?」
『うん!!ありがとう紅玉~!!』
「ふふっ」
こんどは満面の笑みで紅玉に抱きつくルナ。
紅玉も、自分より小さい妹のようなルナを見て、自然と笑顔になった。