第5章 彼女のため
紅炎の言葉を聞き、紅覇は目に涙をためる。
そして、大きくしていた如意練刀を投げ捨てた。
その光景を見て、ジュダルは目を見開く。
「お前が死ぬなんて…そんなの嫌だよぉ!ずっと僕の側にいてよっ、ずっと居てよぉっ…!!」
ルナを紅玉から離し、自分の腕のなかに抱きかかえる紅覇。
冷たい…
ルナの目は開いているけれど、
彼女自身は、とても冷たかった。
「死んじゃヤダよぉっ…!!」
『…っ…こ、は…』
「っ!?」
まるで、古びたロボットのような動きで、紅覇の胸に顔を埋めるルナ。
冷たかったけど…
紅覇はかまわず、ルナをより強く抱きしめた。
『っわ、たし…だいじょ、ぶ、だよ…?』
「ルナっ…」
『寒、い…けど…寒かったけ、ど…いま、あったか、い…』
小刻みに震えながら、小さく笑ってみせた。
「ジュダル」
「…」
「あの氷は、湯で溶けるのか?」
「……」
何も答えずに、ただその場を去ろうとするジュダル。
だけど、
「熱湯」
「?」
「…熱湯の風呂にでも、浸かせとけよ」
「…そうか」
少し俯きながら、紅炎の横で立ち止まって呟いた。