第2章 僕の猫
「…あ」
町並みを見ていた紅覇は、何かに目を留める。
「ちょっと、ねえ」
「はい、何でしょう?」
「馬車…一回停めて」
馬車引きに声をかけ、馬車を停めさせた。
直後に、紅覇は馬車から降りる。
「紅覇様?」
「どうなさったのですか…?」
「いったいどちらに…」
純々、仁々、麗々の順で、紅覇を追う。
「見てよ、"奴隷"がいるー」
ぞろぞろと列をつくり、手足に鎖を巻き付けられている"人間"たち。
汚れた服を着て、絶望した表情しか見せない彼ら…。
次々と、彼らが見知らぬ人間たちに買われていく。
あーあ。…かわいそーに。
あれはもう、人生が終わっちゃったねぇ。
そう思う紅覇。
だけど、紅覇自身が彼らを買おう、という気持ちは表れない。
そこまで"特別"じゃないからだ。
「せめて、特別な輩がいれば、ねぇ?」
頭の後ろで手を組み、馬車に背を向ける紅覇。
無表情とも言える表情で、その絶望に満ちた彼らを見つめる。
「……あれ…?」
ふと、そんな紅覇の視界に"白いモノ"が映った。
セピア色一色の中に、1つだけ…
白くてちいさい、何かが……
「…なに、あれ」
「きっと、子猫だと思います…」
「…ふーん」
真っ白な毛に、少し汚れがついているが…
目が青くて、綺麗なネコだった。
汚れてるのに…
何故か、そのネコが綺麗に見える。
不思議でしかたがない。
そのネコは、ただただ座っていた。