第2章 僕の猫
「ねぇーまだあ?そろそろ僕、飽きちゃったんだけどー」
ガタゴトと揺れ続ける馬車に、少し"酔い"を感じる僕。
馬車で移動し続けて、早くも一週間が経った。
こんなにも長く馬車に乗るのは、初めてな紅覇。
さすがに、飽きと酔いを感じる。
「今日の夕刻までには、煌帝国にお着きになります」
馬車引きの言葉を聞いて、紅覇は頬をふくらませた。
「なんで僕が遠いとこに行かなきゃなんないのさぁっ?炎兄が行けばいいのにーっ」
数日前、遠く離れた国──僕が知らない国に、炎兄にいきなりお遣いを頼まれた。
そのお遣いが…
【その国にしかない、筆(ヒツ)を取ってきてほしい。注文したんだが…なかなか来なくてな。】
ふざけてんのっ!?
自分で行けばいいのにさあっ!!
「人を使いすぎなんだよっ…」
苛立ちがおさまらない。
「落ち着いてください、紅覇様…」
「あと少しの辛抱です」
「あーもうっ、わかってるよー…」
紅覇はふて腐れながら、窓から外に顔を出す。
「…ふーん、けっこう良い町じゃん」
とある小さな町の、真ん中を走っていた馬車。
賑やかで、楽しそうなその町並みに…
紅覇は、少しだけ機嫌を取り戻した。