第10章 帰国
『にゃ…』
門番たちの後ろから、女性の声が聞こえてきた。
口調からして、多少怒っているようだ。
「っ、紅玉様っ…」
「紅覇お兄様が何ですって?
お兄様は今、お昼寝中よぉ」
夏黄文と並んで近寄ってきた紅玉に、門番たちは頭を下げた。
『…こう、ぎょくっ…』
「まったく…いったいどうしたって……え?」
紅玉が、ルナの姿に気がついた。
「…ルナ、ちゃ、ん…?」
『~っ、紅玉うううううっ!!!!』
堪えきれずに、ルナは紅玉に抱きついた。
状況を理解できたのか、紅玉もルナを強く抱きしめ返した。
『っう、ヒック』
「~ルナちゃんっ…良かった、無事で良かったわあぁっ!!」
『うわあぁ紅玉ぅううっ!!』
「ぅ、うっ…何をしているのあなたたちぃっ!!お兄様を呼んできなさいよぉっ!
叩き起こしてきなさいよぉっ!!」
紅玉の一言で、門番たちは全速力で宮廷内に入って行った。
『うわああ~んっ!!』
「ヒック、1ヶ月間も、どこに行っていたのよぉっ?
毎日、毎日、みんなで探し回っていたんだからぁっ」
『こ、紅覇のお熱を下げようと思ってっ、薬草を取りにシンドリアに行ってたのっ…!!』
「ピクッ…
…シンドリア?」
紅玉の動きが停止する。
『そしたらっ、怪我しちゃって…っ』
「ま、待って、ルナちゃん?シンドリアって言った?」
『え?うん、言ったよ…』
「やあ、姫君」
ルナの後ろにいたシンドバッドが、微笑んで紅玉に声をかける。
すると、紅玉は顔を真っ赤にして…
「っし、ししし…シンドバッド様ああっ!??」
ルナから離れ、叫んだ。