第10章 帰国
──次の日。
「ルナ、ルナっ!」
『…ん…んー…なぁに、ジャーファルさん…』
「起きてくださいっ」
『まだ眠いのにぃ~…』
薄く開いたまぶたの隙間から、明るい光が射し込む。
甲板の上で昼寝をしていた私は、まだ重たい目をこすりながら体を起こした。
「そんなことを言っていて良いんですか?」
『んー…』
「ほら、煌帝国が見えましたよ。」
『……え』
ジャーファルさんの言葉を聞いて、一気に眠気が吹き飛んだ。
彼が指さす方向に目を向けると、そう遠くないところに島が見えた。
『……~っ』
すぐに、ルナの目に涙が浮かぶ。
「ふふ、良かったですね」
『~うん、うんっ…!』
両手で顔を覆いながら、何度も頷いた。
「嗚呼、寂しいなぁルナっ…」
涙声で、シンドバッドがルナの肩を抱いた。
『っへ』
「やめてください、ルナが汚れます」
「っな、何だジャーファルっ?酷いぞっ!!」
ジャーファルはすぐに、ルナからシンドバッドを引き離した。
「何でいつも、そうなるんスか」
「ホント、呆れますよ、シン」
『……』
「…(泣)」
この光景も、見られなくなる…。
ルナは寂しげに笑った。
『着いた…』
「長かったですね」
「う、うっ…ルナっ」
約1ヶ月ぶりの、煌帝国の地面。空気。国民の声。
ルナは、大きく息を吸い込んだ。
両腕をひろげ、目を眩しげに開き…
『…~っ…ただいまっ』
胸の内から、その思いを吐き出した。