第9章 私の一人旅
──入浴後。
『……はぁ』
電気を点けていない真っ暗な部屋。
月明かりだけが、部屋とルナを照らしている。
静かに、開け放たれた窓から入り込む風が、カーテンと窓ガラスを揺らす。
広いこの空間で…ルナはただ一人、ベッドの上で膝を抱えていた。
『……紅覇…』
そう呟いても、風の音にかき消されて…
切なく、虚しくなるだけ。
『…会いたい…紅覇』
涙さえも、枯れてしまうほど…
会いたいと呟いて、頬を濡らしてきたこの1ヶ月。
いつになったら帰れるの?
いつになったら会えるの?
煌帝国に帰りたい…
紅覇に会いたい…
『っ…』
服の袖に目を押しつけ、また静かに泣こうとした。
瞬間──
「ルナちゃん、いる?…ぁ」
ヤムライハが、杖を持って部屋に入ってきた。
『…なに?ヤムライハ』
無理に笑顔を作って、ヤムライハを見る。
そんなルナを見て、ヤムライハは一瞬、辛そうな顔をしたけど…すぐに笑顔に戻る。
「あのね?さっき、医務室の先生と話をしてきたの。」
『お話?』
「ええ。…それでね?ルナちゃん……
喜んでほしいのっ」
『…喜ぶ?…何か、あったの?』
あまりにも嬉しそうに微笑むヤムライハに、ルナは首を傾げる。
すると、ふわり…とルナを抱きしめ…言った。
「来週、煌帝国に帰れるわよっ!!」