第9章 私の一人旅
「ひ…え、ひ…ヒビッ?ですか?」
『……』
背中を打ったはずなのに、どうして肋骨なんだろう…。
不思議に思うも、微かに胸が苦しいのはやはり、その所為なのかも知れない。
「明日、煌帝国に戻るって言ってたわよね?」
『うん…』
「…ちょっと、無理かもしれないのよ」
『えっ…?』
遠慮気味に、ヤムライハが上目遣いでルナに言った。
煌帝国に…帰れない?
それじゃあ…紅覇はどうなるの?
熱が上がったままで…ずっと過ごすの?
私…紅覇の熱を下げる薬草を取りにきただけなのに…
紅覇のためだけに、ここに来たのに…
『…っ…やだ…帰る、私っ…帰るっ!!』
「っルナちゃんっ!!」
『っ離して!帰るのっ、煌帝国に帰るのぉっ!!』
走りだそうとするルナの腕を掴んで、ヤムライハは止める。
「いま暴れたら、肋骨にヒビどころか…折れちゃうかもしれないのよっ!?治るまででいいからっ、ここにいてっ!」
そう叫んでもなお、ルナは行こうとする。
その様子を、ジャーファルは焦りながら、ただ見ていることしかできなかった。
『ヤダッ、帰るっ!紅覇を助けなきゃいけないのっ…紅覇のために薬草を取って帰らなきゃいけないのぉっ!!』
「「紅覇っ??」」
その名前を聞いて、2人は一瞬、硬直する。
煌帝国の "紅覇" …
「ま、さか…ルナちゃんって…っ」
「宮廷に住む人間、なんですかっ??」
『っ…?そう、だけど…』
表情が変わった2人を見て、ルナも思わず動きを止めた。