第9章 私の一人旅
~シンドバッドside~
「王よ、」
日も暮れ、祭りがもっと賑やかになった。
俺の視界が微かに歪んできた時だ。
女性たちに囲まれてハーレムになって、幸せの絶頂にいた俺の前に、ジャーファルがやってきた。
…と、さっきの美少女も。
「おお、ジャーファル~」
「……」
『すごーい…綺麗っ』
悪魔ような微笑みを浮かべているジャーファルとは正反対に、彼女──ルナは、ジャーファルの腕にしがみつきながら、辺りを見渡していた。
…青い、目…
真っ白な髪に合う、海のような青い目のルナ。
やっぱり、美しかった。
そして、何より…ジャーファルの身長が170弱だとして……
ルナは…いくつだ?
140センチもあるかどうか…わからない。
「…シン、また飲みすぎましたね?」
「い、いや、今日はそんなに飲んでないぞっ?」
ただならぬ殺気を感じ、ジャーファルに言い訳をするシンドバッド。
だが、そんな言い訳はジャーファルには通用しない。
分かっているけど、言ってしまう。
「ルナさんの前だというのに…何です?このハーレムは」
「いや、そ、その…」
「はぁ…まったく、呆れを通りこして…何になるんでしょうね」
「…」
ジャーファルから発される圧力で、シンドバッドは何も言えなくなった。
『ん~…ねぇ、ジャーファルさん』
「はい、何ですか?」
…恐ろしい…
シンドバッドと目を合わせていた時とは、全く違うジャーファルの表情。
その差があまりにも酷く…
シンドバッドは、グッと涙を堪えた。
『アレなぁに?』
「え?どれですか?」
『あの女の人が着てる服っ』
「あれは、お祭りの日に女性だけが着れる服ですよ」
『ふーん…綺麗だねっ』
「ふふ、そうですね」
なんと微笑ましい。
まるで、親子のようなジャーファルとルナ。
二人のその光景を見ているだけで、心が癒される。
と、その時───