第9章 私の一人旅
「ふふ。今日は、この国にとって特別な日なんです。」
『特別?…お祭りがあるの?』
「はい。謝肉宴(マハラガーン)というお祭りです。
…昼間、あなたの目の前に現れた…南海生物という怪物みたいな生物を倒すと、その日は祭りになるんですよ。」
『え、あの怪物っ?』
南海生物と聞いて、ルナは溺れたときのことを思い出す。
…おじさんとおばさんが、叫んでた名前だ…。
あの時、確かに二人は「南海生物」と言っていたはず。
『…』
スッとベッドから降りて、窓際に近づく。
ひんやりとしている窓ガラスに、そっと指先をくっつけて、外を見てみた。
『…みんな、楽しそう…』
「ええ。この日は、国民の休日みたいなものですから…
思う存分、楽しんでいますよ」
ルナが呟くと、ジャーファルはまた微笑んだ。
「ルナさんも、行ってみますか?」
『……うん、行ってみたいっ』
薬草のことを心の内に一瞬だけ閉じこめ、ルナは笑った。