第9章 私の一人旅
数分後。
ジャーファルのパフォーマンスも終わり、
ピスティも無事、少女を連れて戻ってきた。
ホッと、一安心する。
「ああルナちゃんっ…」
「息してるかっ??」
「わからないわっ…」
二人が近寄ったその少女を見て、シンドバッドは息をのむ。
海水に濡れて、キラキラと輝いている白い髪…。
まだ幼いのか、小さな体…。
長いまつげ…
そして、白い肌。
単刀直入に言おう。
かなりの美少女だ。
胸の辺りがムズムズする。
と、ギュッと胸を押さえると…
ジャーファルがそれを、目撃したようだ。
「こんなにも綺麗な子です。
きっと、"とても素晴らしい" 相手がいますよ?シン」
とても素晴らしい、を強調して言ったジャーファル。
…その異様に優しい笑顔の裏が、怖い。
「ゴホンッ!!…えっと、彼女とは、どういう関係なんだ?」
気を取り直して、夫婦に話しかける。
「っ、煌帝国から、船に乗せてきたんです」
「煌帝国だとっ?」
「はい……確か、大切な方が熱を出したとか何とかで…」
「…」
「嗚呼、それは大変ですね…。
彼女の "とても素晴らしい" 大切な方が熱を出したなんて…
っもしや、薬草を取りに来たのでしょうか?」
…分かったから、ジャーファル……
頼むから、もう何も言わないでくれ…(泣)
「ええ、恐らく…そうだと思います…」
「王っ!溺れた少女はどこに…あ」
「ああ、ヤムライハ…助けてくれ…(泣)」
怪我をした国民の手当てをしていたヤムライハが、戻ってきた。
シンドバッドは、すぐさま助けを求める。
「えっ?」
「いえ、何でもありませんよヤムライハ。
それより、彼女の方を」
「…あ、はいっ」
縋(すが)り付こうとするシンドバッドから離れ、ヤムライハはルナの元へと駆け寄った。