第7章 秘密の花園/前編
いつもながらの賑わいを見せる安土城城下町。
その一角にある大衆食堂の前で、俺たち四人は足を止めた。
「鶴亀食堂…… ここか、お前の女が働く店は」
「はい、そうです」
「楽しみだなー 天女にまた逢えるなんて」
「信玄様、もう莉菜に妙なチョッカイ出すのはやめて下さいよ」
行列は無いものの、昼時で少し混んでいそうだ。
まずは俺が暖簾をくぐって店内を覗き込んだ。
「こんにちは。席空いてますか」
「いらっしゃ… あっ!」
忙しそうに給仕の仕事をする莉菜さんと目が合う。
「佐助くん いらっしゃい!今ちょっと混んでて… カウンターでもいいかな?」
いつも通り俺が一人で訪れたと思ったんだろう、カウンター席を勧められた。
「ごめん。今日は一人じゃないんだ。四人がけの席が空くまで待ってる」
「四人?…わかった、じゃあちょっと待っててね!」
莉菜さんは一瞬 不思議そうな顔をしたけれど、すぐ納得して仕事に戻って行った。