第7章 秘密の花園/前編
「えっ、四人で… 今からですか?」
宴の翌朝。
信玄様に呼ばれた俺は驚きを隠せなかった。
「ああ、そうだ。そんな顔をするって事は もしかして覚えていないのか?昨夜、俺達に安土の天女を改めて紹介してくれ と言ったら乗り気だっただろう」
「…………」
四人で安土に行くなんて、いつの間にそんな話に…
どうやら俺は宴の途中から記憶を失っていたらしい。
「いずれは天女をこの城に招いてあげたいが、まだ時期尚早のようだからな。今回はこちらから出向こうという話になってたんだが」
そうか… 全く覚えてないな。
「謙信様も来ると仰ってたんですか?」
「言ってたぞ。ついでに安土に巣食ってる野盗どもを一掃するとも言ってたな」
「えっ」
「本当に何も覚えてないんだなー それを聞いて喜びの舞を踊ってたことも忘れたか?」
「喜びの舞?俺がですか?」
「ああ、"野盗が減ったら莉菜さんの身の危険も減る"とか言いながら それは楽しそうに」
「…まじか」
「舞に付き合わされてた幸はかなり嫌そうだったが、見てる分には楽しかった」
「あー」
幸村、度々すまない。
ちょっと羽目を外し過ぎた。
後でまた謝らないと…
「分かりました。すぐに用意します」
俺は信玄様に頭を下げると、準備のために自室へ戻った。
………
………