第1章 臆病な恋心
「莉菜さん、そんな顔しないで」
「…!」
見かねたのか、佐助くんが私の手に自分の手を重ねてくれた。
「また近々、様子を見に来る」
ああ、ごめんなさい。
これ以上 気を遣わせちゃダメだ。
(その言葉だけで充分…)
そう言い聞かせて自分なりに笑みを浮かべると佐助くんもほんのり笑う。
「じゃあこれにて」
「うん、気をつけてね…!」
お茶屋さんのお代を支払った後、
佐助くんは軽く手を振ってドロンと消えてしまった。
ヒュッと起こった小さな風がさっきもらったばかりの髪飾りを揺らす。
(佐助くん)
(次に会える日まで、どうか無事で……)
目を閉じて佐助くんの身を案じ、祈った。