第1章 臆病な恋心
「莉菜さ、っ!」
「……え?」
横に居る佐助くんが、
私に何かを言いかけた直後ガックリと項垂れた。
「どうしたの?」
「………」
「佐助くん?」
「………」
「まさか、お団子詰まっちゃった…?」
急に様子がおかしくなった佐助くんに問いかけるが返事がない。
ほんとに詰まったんじゃ…!
「佐助くん大丈夫!?しっかりして!」
こういう時どうするんだっけ!?
確か詰まらせた人の後ろに回りこんで背中から腕を回して横隔膜辺りを手で思いっきり突き上げて……!
待って、横隔膜ってどこ!?
「莉菜さん…」
「え!?」
「莉菜さん 落ち着いて。大丈夫、団子は詰まってない」
「違うの!?あ〜 よかった」
脳内でワタワタと救命処置法を思い出していると佐助くんからの返答があり、安堵して息を吐く。
「でも、残念ながら今日はここまでだ。約50m後方に秀吉さんと三成さんの気配を感じる。おそらく君を探しに来たんじゃないかな」
「えっ、嘘!?」
安心したのも束の間、佐助くんから告げられた事実に驚愕する。
お遣いに出てそのまま道草食ってたから、秀吉さんを心配させちゃったのかも…!
「ものっすごく残念だけど俺、もう行かないと」
そうだ、
佐助くんは、信長様と敵対する国の忍。
だから二人で居るところを誰かに見られるとまずい。
でも、もうさよならだなんて…
まだ1時間も経ってないよ……
「うん…」
もう行かないと、と言う佐助くんに、辛うじて返事をする。
「お勘定は俺がしておく」
「いいの? ありがとう… ごめんね」
「………」
…ーー私、顔に出てるよね?
別れ際に暗い顔なんてしたくないのに。
今の関係じゃ、二人で過ごせる時間はとても短い。