第6章 星降る夜に愛を誓う/後編
「ね、佐助くん…」
すっかり星に魅入っている莉菜さんが、流星から目を離さぬまま話しかけて来た。
「流れ星を見たら願い事が叶うって言うでしょ?」
「…ああ」
「今日はこんなにいっぱい流れ星を見られたから、私達たくさん願い事 叶うかもね?」
「確かにそうだな」
相変わらずサラリと可愛いことを言うよな、莉菜さんは。
「でも私は… 願い事はひとつ叶えばいいかな」
「ひとつでいいの?」
「うん」
「ちなみに どんな願い事か聞いてもいい?」
「え?…ふふ、なーいしょ♡」
「…っ」
『なーいしょ』で、莉菜さんが首を傾げてこっちを見た。
(やられた)
なんて破壊力だ。
気の利いた台詞が、なんっ…にも出てこない。
今のこの莉菜さんを目の当たりにして、『こ〜いつぅ〜』とか言いながら おでこをツンと出来る人が もし居たら、俺は心底尊敬する。
いや、こ〜いつぅ は少しダサい。
恋人同士設定ならバリエーションも広がるんだけど。
例えばそうだな…
『内緒…? なら、お前が言うまで口付けもくっつくのもお預けだ。ちゃぁんと言えたらたっぷりご褒美やるよ』
とか?
『何その顔… 反則でしょ』
『こーら、大人を揶揄うんじゃない』
とか。