第5章 星降る夜に愛を誓う/前編
「でも、誰にも見つからないでどうやって部屋から出るの?私も天井裏から?」
「いや、天井裏はキレイじゃないから普通に窓から出る」
「普通に?窓から!?」
莉菜さんの目がさらに輝き始めた。
「お姫様を攫って行こうと思って」
「えーっ それ全然普通じゃないよ!面白そう!」
「よし… あまり時間もないしそろそろ決行しよう。莉菜さんごめん、ちょっと離れてて」
「うん!」
莉菜さんに少し距離を取らせ、まずは部屋の一方の窓を開け放つ。
そして懐に手を入れると ある秘密兵器を取り出した。
「佐助くん、それなぁに?」
「これは焙烙玉(ほうろくだま)って言って、要は手榴弾みたいなものだ」
「手榴弾!?」
手のひらサイズの丸い玉を見せながら説明する。
「そう、この導火線に火をつけて…」
「火!」
(シュッ、ジジ……)
火をつけた焙烙玉を右手に持つと、素早く投球フォームを構えた。
「出来るだけ遠くに…」
「…うん」
頭上に振りかぶり、軸足を安定させた状態で左足を地面から持ち上げる。
「投げ、」
「え!?」
持ち上げた左足を一歩前へ大きく踏み込み、
「る!」
全体重をかけ、
ぶん!と右手を思い切り振り抜いた。
(ヒュン…ッ)
焙烙玉が窓から勢いよく飛び出て、城を囲う森の方へと飛んで行く。
「っ! す、ごーい、佐助くん!!」
「…ーーまずまずだな」
窓から玉の行方を見守っていると、
(ボーン!!)
森を少し入った辺りに落ちて、爆発した。
すぐに城の周りが騒がしくなり、見張りの兵達のほとんどが爆発音のした方へと走って行くのが確認できた。