第5章 星降る夜に愛を誓う/前編
「い、家康っ」
どうしよう、聞かれた…!?
「何燃やしてるの?さつま芋?じゃないか… 時期的に」
家康が焚き火を覗き込もうと じりじり近付いて来た。
だめ、まだ手紙が燃え切ってない!
「あー、お芋じゃなくて、その… 部屋に溜め込んでたゴミとか不用品とか!」
自然な振る舞いで、家康の進路を遮るように立つ。
「不用品…?そんなの自分で燃やさなくても女中か小姓にでも頼めばいいでしょ。…そう言えばあんた、ちょくちょく何か燃やしてるよね」
「う、うん、なぜか無性に火を見たくなるっていうか…… 時々」
「火を見たくなる?」
家康の眉間に深いシワが刻まれ、不審感をあらわにした目で見据えられる。
「うん… そう…… 火を見てたら何となく落ち着くんだよね……」
「どういう心理状態なの、それ」
ああ 今、完全に怪しい人だと思われた。
まぁいいや… それよりも、
「い、家康はこんな朝からお城でお仕事?信長様に呼ばれたとか!?」
無理やり別の会話に持っていこうと頭をフル回転させる。
「仕事じゃない。城の書庫にある本を借りに来ただけ」
よく見ると、家康の手には難しそうな本が何冊 も抱えられていた。
「そっか!家康は読書好きだもんね、三成くんと一緒で」
「あいつと一緒とか わざわざ言わなくてもいいよ。読書好きな人間なんて ごまんと居るんだから」
「そうだよね、ごめん…」
「それより あんたもたまには本でも読んだら?地面に這いつくばって、焚き火なんかしてないでさ」
「!!」
さっき、フーフーしてた所から見られてたんだ!?