第5章 星降る夜に愛を誓う/前編
城の庭までやって来た私は、周囲に落ちている木の枝を拾い集めた。
何十本か集まったらそれらをまとめて地面に置き、火打石で火をつける。
カチカチ カチカチ カチカチ
ふー、ふー、
この時代に来た当初は なかなかつかなかった火も、最近はコツを掴んだのでわりとスムーズにつけられるようになった。
しばらくすると重なり合った枝の間で赤い火がチロチロと燃え始め、そこから細く煙が立ち上る。
「うん、いい感じ」
私は地面に這いつくばり、さらに息を吹きかけた。
「ふーっ、ゲホッ!けほけほ、こほっ」
舞い上がった煙を吸って咳き込んでしまったけど、お陰で火の勢いが強くなった。
「…よし、こんなもんかな」
さっきの手紙を帯の中から取り出す。
文字を指でなぞりながらもう一度読み返した。
「亥の刻… 迎え、に……」
少し角張った、右肩上がりの綺麗な字。
もう その文字すら愛しくて。
「…………」
けど……
(カサッ…)
意を決して、手紙を火の中に入れる。
紙に火が移って、端から徐々に黒くなっていった。
「…っ」
燃えてく瞬間は、ちょっと苦しいな……