第5章 星降る夜に愛を誓う/前編
「ふゎ〜 ねむ……」
四月。
桜の見頃もそろそろ終わりを迎えるころ。
毎朝の日課であるスズメの餌やりを終え自室に戻ると…
黄色い花が一本、文机に置かれてあるのが目に入った。
「あ!」
小走りで文机に近づく。
「タンポポだ、可愛い…!」
摘んできて間がないのか、
それはまだ茎も瑞々しく花も元気に開いていた。
手に取って花にキスするようにそっと口元に当てる。
(佐助くん、来てくれたんだ…!)
私はタンポポをいったん置いてから部屋にある木製の踏み台を動かし始めた。
「よいしょ、っと」
部屋の隅まで引きずって移動させ、着物の裾を割ってから慎重に上る。
上で爪先立ちになり 天井へと手を伸ばして…
「うーん、もうちょっと………っ」
プルプル震えながら天井板を外す。
外したところから手を入れて少し探ると、折り畳まれた白い紙を発見した。
「…あった!」
踏み台から降り、さっそく紙を開く。
中には佐助くんの字で、こう書かれてあった。
【おはよう
今夜、亥の刻に迎えに来る
なるべく起きて待っていて欲しい☺︎】
「……!」
読み終わるや否や手紙を帯の間にはさみ、部屋を飛び出した。
廊下を走りながら頭の中で手紙の内容を反芻する。
亥の刻って夜10時くらいだよね?
迎えに来るって、どこか行くのかな?
そんな時間から外に…?
短い文面からは全てを読み取れなくて、次々と疑問が湧いてくる。
でもとにかく今夜、佐助くんに逢えるんだ…ーーー
もうすでに心臓がドキドキし始めた。
早く夜にならないかな……