第4章 男子会・春日山城城下の大衆食堂に於いて
〜っ!?
何で今ここで謙信様が来んだよっ!
梅干し食ってたんじゃねーのかよ!?
「謙信、よくぞ聞いてくれた。そこまで言うなら…と、俺は彼女に口付けを所望したんだ」
ーーーーー。
…駄目だ、
佐助の奴、ほぼ白眼むいてやがる。
でも諦めるな佐助、
まだオチを聞いてねえ。
莉菜はそう簡単に男に口付けるような女じゃねーだろ?
って、俺は莉菜のことあんまよく知らねーけど…!
「口付けと言っても唇にじゃない。頰にでいいからしてくれと頼んだ」
「ほほぉ」
謙信様は笑うに笑えねー返事をした後、別の方向に向き直り、また口に梅干しを放り込んだ。
頼むからそのまま大人しくしててくれ。
「でも結局、最後までして貰えなかったよ。だーいぶ粘ったんだがなぁ。まぁいくら俺だって たまには拒まれることもあるさ… ん!美味いな この大福」
ふー…
ほらな……
口付けなんてするわけねーんだ。
つーか 俺が心底安心してるとかあり得ねえ…!
ーーー
そこでやっと話に区切りがついた形となり、信玄様による地獄の独擅場は終わった。
佐助はもう心ここにあらずで、機械的に手と口を動かして飯を食ってる。
でもな佐助、
酷なこと言うようだが。
まだお前と鶴亀の女は心を通わせ合ったわけじゃねえ。
つまり莉菜はまだ誰のものでも無いってことだ。
信玄様の目に止まっちまったのは不運としか言いようがねーけど、
そんなに心配ならさっさと思いを告げて、自分のもんにするしかねーんじゃねえか……?
俺も色恋沙汰には疎い方だが、それくらいは分かるぞ…ーーー
と、後でそう助言してやろうと考えていたその時。