第4章 男子会・春日山城城下の大衆食堂に於いて
天女とか言い出した信玄様に俺も謙信様も食いつくが、それでも佐助は黙ったままだ。
なあ、さっきからどーしたんだよ
今のは誰もが突っ込むところだろ。
もしかして具合でも悪いのか…?
と、俺が佐助に気を取られていると、その横で信玄様と謙信様のくだらねー言い争いが始まった。
「いーや、あれは間違いなく天女だ」
「そんな物はおらんと言ってるだろう」
「いるさ」
「おらん」
「いーる」
「おらん」
「夢くらい見させろよ謙信… そうだ、天女は名前まで可愛いぞ?その子の名は莉菜と言っ」
「ブーーーーーッ!!」
「ぉわ!?」
信玄様が女の名を口にした途端。
真正面に座る俺の顔面に向かって 佐助が盛大に茶を吹き出した。
「おま…!何すんだよ、ぼっとぼとじゃねーか!」
「けほっ、幸村すまない…」
「大丈夫か二人とも。店主、悪いが手ぬぐいを貸してやってくれ」
「手拭いかい?はいよ」
店の手ぬぐいを借りて、顔と着物を拭く。
佐助も机に溢れた茶を無言で拭いてる。
謙信様は俺たちのそんな様子を全く動じずにチラチラ見ていた。