第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「…と言うわけで、端的に説明すると次に現れるワームホールにうまく接触できれば現代に戻れる可能性が高い」
「よく分からないけど、とにかくいつかは帰れるんだね! 良かった…」
莉菜さんが安堵したのが伝わってきて、俺も気が楽になった。
まだ観測データが不十分で"いつ"帰れると明言できない以上、精神的な負担は極力減らしてあげないと。
「莉菜さん、」
「え?」
「この時代は物騒だけど今まで通り安土で姫君として生活してれば少しは安全だ。あまり無茶なことはせず、ワームホールが出現するのを待つのがベストだと思う」
「うん…」
俺からのちょっとしたアドバイスに莉菜さんは神妙な面持ちで頷く。
「しばらく仕事でこの近辺に滞在してるから… 何かトラブルがあれば狼煙(のろし)で連絡して。そうすればすぐに駆けつける」
「ごめんね。何から何までお世話になります」
「いや、謝らなくていい。この時代の経験値で言うと君よりちょっと先輩だから助言しただけだ。 何より俺には君に快適な戦国ライフを送ってもらう義務があるから」
「義務?」
「ああ。タイムスリップに巻き込んで君の人生を大きく変えてしまったのは俺だ。だから俺が、責任を持って君を現代に連れ帰る」
「佐助くん…」
「唯一の現代人仲間として協力させて。 君さえ良ければどんどん頼って欲しい」
「仲間、かぁ… わかった、ありがとう!頼らせてもらうね!」
彼女が柔らかく微笑むのを見つめながら、この時の俺はすこぶる満足していた。
まさか数ヶ月後、ゲレンデどころか氷山も溶けるほどの熱い恋をするなんて思いもせずに…ーー
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