第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「ん〜! このよもぎ餅、餡子がみっちりで美味しぃぃ」
「………」
(こうして見てると至って普通の女の子なのにな)
莉菜さんと話をする中で確信したことがある。
実は彼女の性格は、そのホンワカした雰囲気からは想像がつかないくらいに潔い。
例えば京都の段階で長かった髪は洗髪をラクにするためバッサリ切られていたし、
仮にも姫という身分でありながら食堂の仕事をしてるのも自らの強い意志だと言う。
戦国時代の環境に馴染めなくて辛い…
だからと言って部屋に閉じ篭って過ごすのは嫌だったんだそうだ。
明るく素直で、いざと言うときには驚きの行動力を発揮する莉菜さん。
信長様を始め織田軍の武将全員に気に入られてるのも納得がいく。
「莉菜さん、よもぎ餅もう一つ食べる?」
「え、いいの!?」
「もちろん」
「ありがとう♡ でもあと1つだし悪いよ。半分こしよう?」
「くす… 了解」
頼もしいパートナーが出来たみたいで心が温まるな。
やっと見つけたかけがえのない現代人仲間だ。
これからは彼女と一緒に戦国ライフを楽しもう…ー
「ねぇ 佐助くん。私達、いつか元の時代に帰れるのかな。このまま一生ここで過ごすのはやっぱり……」
俺が胸を熱くしていると、さっきまで朗らかだった彼女がふと弱音を漏らした。
「ごめん、言葉足らずだった。 少し説明を追加しておく」
ワームホールが出現するまで少しでも安心して暮らしてもらえたら…
そう思い、今 話せる限りの知識や情報を彼女に伝える。