第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「また風がきつくなってきたな。怖くない?」
バルコニーで身を寄せ合い、暫くの時間を過ごした。
そろそろ宴に戻らないといけない頃合いだ。
「佐助くんが居るから怖くないけど… でも戻った方がいいよね? 主役だし」
莉菜さんも同じことを思ってたらしい。
「そうだな」
このまま彼女を独り占めしていたい気持ちをそっと押さえ込む。
(ん…?)
ふと天主内に目をやると家臣の一人が腹踊りを披露していた。
武将全員の目線はそちらへ向かってる…ーー
これはラストチャンスかも。
「莉菜さん、待って」
「え?」
天主に戻りかけていた莉菜さんの手を引く。
そして一気に距離を詰めると唇を奪った。
「ん…っ、…!」
さっきみたいに掠め取るようなキスじゃない。
ほんのり酒の香りが残る口内を深く味わう。
「は、…だめ、」
莉菜さんは武将達の目を気にして顔を逸らそうとするけど、後頭部を掴んでそれを阻止した。
「秀吉さんに怒られるよ…?」
「…ごめん、止まらないんだ」
今日も変わらず絶好調で君への想いが止まらない…ーー
今ならどんなに恥ずかしい台詞でも躊躇いなく言える気がする。
「ふっ、顔が真っ赤。可愛い」
「ん、あ」
腕の中で莉菜さんの力がクッタリと抜けて行く。
(莉菜さん… ありがとう)
思い返せば出逢ったその日に運命を感じてた。
一人だった時には決して埋まることの無かった空白部分を、君という存在が満たしてくれたんだ。
(世界で…… いや、宇宙で一番愛しいひとを守るためなら俺はまだまだ強くなれる)
俺達は時間の許す限り、甘いキスを交わし合った。
ー おしまい・あとがきへ続く ー