第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
『だめ、危ない!』
そう叫んだ彼女に胸を強く押され、
気付いた時にはワームホールに飲み込まれていた。
ーーさて、ここからが運命の分かれ道とでも言うベきなのか。
時空を越える最中に逸(はぐ)れてしまった俺達は別々の場所にタイムスリップしてしまう。
俺は史実上、謙信様が命を落とすはずだった戦場に飛ばされ瀕死の謙信様に応急処置を。
本能寺へ飛ばされた莉菜さんは殺される寸前だった信長様の命を救った。
彼女はその一件で信長様の気に入りとなり、安土城で世話になることになったんだそうだ。
ただ完全に予想外だったのは俺と彼女は"違う年代"に飛ばされていたという点だ。
俺がここへ来たのが4年前なのに対し、なんと彼女は1か月と少し前に来たばかり…
どうりでどれだけ探し続けても手掛かりひとつ掴めなかったわけだ。
「佐助くんは4年も前にこっちに居たんだね… しかも飛ばされたところが戦場のド真ん中だったなんて」
「ああ、アレは流石に肝が冷えた。挙動不審、身元不明の不審者でしかない俺を拾って育ててくれた謙信様には深い恩義を感じてる。でも、君の方こそ いきなり殺人未遂現場に放り出されて随分怖い思いをしたんじゃないか」
「ふふ、そうだね。確かに怖かったけど… でもあの時は無我夢中だったから」
莉菜さんはよもぎ餅を頬張りつつ、まるで何でもない事のようにニコニコと話す。
(無我夢中…ーー か)
もしかすると、俺を落雷から庇ってくれた時もそうだったのかもしれない。
君が危険を察知して俺を突き飛ばさなければ、俺はあの時雷に打たれて死んでただろう。
そしてその所為で君は…ーー