第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「莉菜!ようやく見つけた!」
ドロンしたと見せかけて物陰から見守ってると家臣を連れた秀吉さんがやって来た。
到着するなり路地で倒れたままの子分達に気付いたようで…ー
「何だこの連中は… まさかこいつらに何かされでもしたのか」
「心配かけてごめんなさい! 仕事帰りに待ち伏せされて追いかけられて… でも助けてもらって平気だったの」
「なんだって!?」
軽く事情を聞いただけで秀吉さんの顔が険しくなる。
そして心底心配してると言わんばかりに莉菜さんの頭を撫でた。
「こいつら、最近この近辺で何かと騒ぎを起こしてる奴らだな。怖かっただろ、探しに来るのが遅くなって悪かった。ごめんな」
言動を見れば一目瞭然。
噂で聞いた通り、秀吉さんは面倒見の良いお兄さんタイプの武将だった。
でも莉菜さん… 秀吉さんを相手にうまく誤魔化せるだろうか。
「にしても、だ。一体どこの誰に助けられた? 見たところ誰も刀傷を負ってない。丸腰でこれだけの人数を相手にするとはなかなかの手練れだぞ」
秀吉さんは手下たちの状態を確認後、なおも莉菜さんに訊ねる。
「それは… えっと、」
「知ってるならちゃんと言えよ? 後日きちんと礼をしなきゃならないからな」
「う、ううん、知らない人。通りすがりのスーパーマンみたいな」
「通りすがりの酸っぱいまん… 梅干屋の息子か? まぁいい、後でこいつらからも事情は聞く」
莉菜さん グッジョブ。
うまく現代語を取り入れたお陰で深く追及されずにすんだ。
秀吉さんは子分たちの処理を家臣に任せ、莉菜さんを連れて安土城へ帰っていった。