第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「ふぅ、」
ひと息ついてから莉菜さんの側に戻る。
「お待たせしてごめ…」
(ん?)
彼女は何故か、さっきよりも浮かない顔をしていた。
「顔色が青いな。もしかして気分でも悪くなった?」
俺の問いかけに複雑な表情を浮かべながら首を横に振る。
「違うんです。助けて頂いて感謝しなきゃいけないのに… 皆、死んでしまったのかなって思って」
「…ーー」
(莉菜さん……)
相手に非があろうと無闇に命を奪うのには抵抗がある…ー
いかにも現代人らしいそんな甘い考えはこの乱世では通用しない。
…と、冷静に思う一方でどこかホッとしてる自分がいる。
「安心して。気絶してるだけで誰も死んでない。この尖った武器は目くらましで実際は肘と膝でしか攻撃してないんだ」
「そうなんですね…!」
タネ明かしをすると莉菜さんはやっと体の緊張を緩めた。
が、その直後。
「わ、後ろっ!」
莉菜さんが再び恐怖心を露わにする。
彼女が指差す方向、
つまり路地の入り口付近を振り返ればそこには…ーー
「許さね"ぇ"………」
さっき顎を砕いて気絶させたはずのリーダーがものすごい形相で立っていた。
リーダーは一歩、また一歩と、通路に倒れている子分達の身体を踏みつけながらゆっくりと此方へ近づいて来る。
「しぼび(忍び)だろうが何だろうが俺は負けね"ぇ」
どうやら俺とやり合う気らしく、彼の右手は刀の柄にかかっていた。
負傷した身体でここまで歩いてきた執念には感心するけど…
相当キツいんだろう、足がフラフラだし言葉も聞き取りにくい。
「それ以上話さない方がいい。顎の骨折が悪化しますよ」
「うるへぇ! 余計なお世話ら!俺ァな、昼間から苛ついてんらよ!!」
まともに相手をせず諭すように返事をしたら余計に怒らせてしまった。
「テメ"ーを殺して、その女をもあ(貰)う」
「…!」
それはできない相談だ。
(話しても無駄か。弱ってる人に刃を向けたくはないけど)
諭すのは諦めて背中に挿した忍者刀に手をかけたその時…ーー