第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
彼女を安心させるつもりで話した何気ない会話の途中、脳天に雷が直撃したような衝撃を受ける。
(まさか)
現代人しか知らないはずのボクサーの名を彼女は知っている…ー
という事はつまり。
「…君は」
「…あなたは」
お互い言葉が続かない。
どうやら驚いてるのは俺だけじゃないみたいだ。
「やっぱり君は、この時代の人じゃなかったんだな」
「もしかしてあなたもタイムスリップ…?」
「…ーーああ」
鼓動が速くなって行くのを感じながら次の言葉を絞り出した瞬間、
「見つけたぞぉーー!!」
「この奥だ!」
子分達の声に阻まれてしまった。
(来たか…ー)
追ってきた子分達は俺の思惑どおり縦一列になって路地に入ってくる。
「先に全員を倒す。積もる話はその後で」
莉菜さんを背中に隠し、クナイを手に臨戦態勢を整えた。
するとふいに後ろから着物の裾を引っ張られる。
「どうかした?」
「変なことに巻き込んでごめんなさい…!」
「!」
莉菜さん… それは俺のセリフだ。
俺が君をタイムスリップに巻き込んでしまった。
これまでの経緯、これから先の事、その他もろもろ全てを今すぐ説明したい気持ちに駆られるけど…ー
「大丈夫、早急にカタをつける」
とりあえず目の前の敵を倒すことを優先しないと。
平静を心掛けてそれだけを告げ、元来た道を見据える。
「覚悟しやがれ、アニキの仇ィィーー!!」
さっそく一人目の子分が白刀を振りかぶって向かってきた。
時間が惜しい、
だから…ーー
「最初から全力でいかせてもらう。はっ!」
(ドスッ)
「うぐ!?」
相手の攻撃をいなして脇腹を肘でひと突きする。
横の壁に身体を打ちつけた子分はガクリと膝をついて地面に倒れた。
「チッ、どこの誰だか知らねぇが なかなかやるな。だが俺はそいつみてぇに簡単にはいかねぇ、死ねやァァ!」
一人目が倒れてすぐに二人目が襲い掛かって来たけど、
(バスッ! ドカッ!)
「ぐふ!」
二人目も口だけの男だった。
こっちが手ごたえを感じる前に意識を失ってしまう。
三人目以降も一人ずつ同様に沈めていき、ほんの数分で子分全員を片付けた。