第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「っ、なんだぁ!?」
音もなく現れた俺を見てリーダーが素っ頓狂な声をあげる。
「野郎、一体どこから…ーー ぐわっ」
(ドサァ……ッ)
無言で顎に一撃を喰らわせて まずはリーダーを仕留めた。
「ア、アニキィィ!!」
「誰だテメーはァ!?」
周りにいた子分達が一斉に刀を抜く。
「生憎だけど悪党に名乗るための名は持ち合わせていない。それより君、大丈夫?」
「は、はい!」
「俺は通りすがりの正義の味方だ。一緒に来てくれたら身の安全を保証すると約束する。信じて着いてきて欲しい」
俺の申し出に 莉菜さんは多少の動揺を見せつつも頷いてくれた。
「させるか!」
「待ちやがれ!」
手を取り合って走り出した俺と莉菜さん。
子分達は目の色を変えて追ってくる。
「こっちだ、来て」
「はい…っ」
「待てやコラァーッ、痛でっ」
「んん!? 草履に何か… イテテテ」
走りながらまきびしをバラ撒いて数人を足止めした。
あとは時間差で路地にでも誘い込んで…ーー
「はぁ、はぁ、そ、その道の先は確か行き止まりです…っ!」
疲労のためか莉菜さんの走る速度が徐々に落ちてくる。
「行き止まりなのは知ってる。ちょっと失礼」
「!? きゃ」
短く返事をしてから彼女をヒョイと横抱きにし、狭い路地へと入って行った。
ーーー
「君は俺の後ろに隠れてて。いい?」
路地の最奥で莉菜さんを下ろす。
「…っ」
不安を払拭できない莉菜さんは両手を胸の前で組んで震えていた。
「心配いらない。一人で大人数を相手にする時、実はこういう場所は最適なんだ。もちろん腕に自信が無ければ危険極まりない自殺行為だけど」
「そう、なの…?」
「ああ。人目にも触れにくくて一石二鳥。その昔、かの有名な国民的ボクサーも十数人のヤクザ相手に乱闘した際、わざと路地に誘い込んで"一対一"の状況を作り出し見事勝利したという伝説があって」
「あ! そのボクサー知ってます、ガッ●石松さんですよね?」
「そうそう ガッ●石ま…ーー え?」
「…え?」