第2章 手と手を繋いで
この時代に来て かれこれ四年以上が経つ。
上司である謙信様が無類の戦好きと言うこともあり、俺は幾度となく戦場に駆り出された。
今でこそ与えられた役割はきちんとこなせるようになったけど…
初期のころ、特に初陣は悲惨だった。
元いた時代では ごく一般的な学生だった俺。
運動面での特技と言えば人よりも足が速いことくらいで武器の扱い方なんて全くわからない。
射られた矢が雨のように降り注ぐ中、
とにかく死なないように自分の身を守るしかできなかった。
敵の攻撃を避けるだけでも精一杯な俺をさらに苦しめたのは、嫌でも目に飛び込んでくる残酷な場面の数々だ。
ドラマでも映画でもない、
生々しい現実に遭遇するたび胃が痙攣し、嘔吐を繰り返した。
あの時は本当にキツかった…
そんな俺も いつの間にか謙信様お抱え忍集団"軒猿"のリーダー格にまで上り詰め、そろそろ忍者マスターの称号をもらえるんじゃないかというレベルまでに成長した。
謙信様をはじめ忍の先輩方による、愛あるスパルタ指導のお陰だ。
それでも未だに、あの戦場独特の雰囲気には慣れることができない。
半狂乱になった男達の怒号や断末魔の悲鳴を聞くと、思わず耳を塞ぎたくなる。
辺り一帯 血と硝煙の匂いが立ち込め、
刀と刀がぶつかり合う金属音は頭に直接響く。
焼け野原には矢が突き刺さったままの血まみれの人間がゴロゴロと転がって…
生きてるのか死んでるのか……
本当は、戦になんて行きたくない。
平気そうに見られるけど、全然平気なんかじゃないんだ。
戦の後はいつも息が詰まって苦しくて。
今夜もきっと眠れない…ーーー
そんな時 頭に思い浮かぶのは
太陽のように眩しくて
花のように愛らしい君の笑顔
莉菜さん…
逢いたい…………