第9章 真夏の個人授業〜教え子の甘い誘惑〜/R18
しばらくして。
「莉菜、居るか?」
「は、はいっ」
「光秀だ。開けるぞ」
「はい、どうぞ……」
予想どおり、光秀さんが部屋の中へと入って来た。
気配を絶って二人の様子を天井板の隙間から伺う。
「莉菜、信長様がお呼びだ」
「えっ?」
「今度、近隣の大名達を集めて行う宴について話があるそうだ」
「私に、宴の話…?」
「信長様が、宴の催しのひとつとしてお前に舞を踊るようにと仰っている」
「舞!?そんなのムリですよ!」
「早とちりするな。お前の想像している舞ではない。以前一度、信長様の前で踊ってみせただろう。あの舞の名は何だったか…… ああ、思い出したぞ。『ほっぺひっぷ』、だ」
「ち、違います、ヒップホップです…」
莉菜さん、ダンスを披露したのか。
知らなかったな…
引き続き、話に聞き耳を立てる。
「舞の名前などどうでも良いが、信長様はあの踊り自体を いたく気に入ったらしい。宴を盛り上げるのに一役買って出ろとの事だ」
「で、でも、あれはまだここにお世話になって間なしの時に信長様に何か芸を披露しろって言われて怖くて仕方なくやっただけで… 学生の頃ダンス部だったけど、特別うまいわけでもないし……」
「お前の場合、上手い下手は さして重要じゃない。とにかく天主に来い。せっかく俺が秀吉の代わりに迎えに来てやったのだからな。話はそれからだ」
「うーん……」
このまま莉菜さんは光秀さんに連れて行かれるかもしれない。
天井裏でひとりヤキモキするが、為す術もなく歯を軋ませる。