第1章 臆病な恋心
ー おまけ ー
「今日はさっぱりだ。そろそろ店仕舞いするか」
安土城城下で、俺はいつものように行商人として店を出していた。
が、昼頃から客足がパッタリと途絶えたため、バサバサと売れ残った商品を風呂敷に包む。
(ザッ)
「…ん?」
足音に気付いて目線を上げると、目の前に息を切らした佐助が居た。
「おー、佐助か。何だよ 息なんか切らして」
「はぁ… はぁ… 幸村、水をくれ……」
「水?」
喉が渇いているらしい佐助に、竹筒に入れていた水を分けてやる。
「すまない、生き返った」
「大袈裟なやつだな。つか そんなに息切れるまで何してたんだ?」
「………あれを、渡しに」
「あれ??」
あれと言われて、何だったか考える。
「あれ、あれ、…あー!あれか!!」
「そう、あれだ」