第8章 秘密の花園/後編
「………分かった。雲丹だ」
「っ、ウニ!?」
自信満々にウニと言われ、衝撃でワケがわからなくなる。
確かに黒くてギザギザだけど……!!
「莉菜様…!」
お晴ちゃんが私の肩に手を置いて、軽く頷いた。
そのお陰でハッと落ち着きを取り戻す。
「ピ、ピンポーン。大正解」
「だろ?俺の勘は良く当たるからな。なかなか立派な雲丹じゃねえか」
「…ふふ」
そうだ。
ちょっとショックだけど、ウニということにしておいた方が丸くおさまる。
そう思って自分を納得させた。
ありがとうお晴ちゃん。
「お前も作ったのか?見せてみろ」
ウニと言い当てて(本当は違うけど…)気を良くした政宗が、今度はお晴ちゃんの巾着にターゲットを変更する。
「あ!」
あっという間に、青い巾着は政宗の手に渡ってしまった。
「いい色だな。深みのある青の生地に三日月の刺繍が映えてる。縫製も申し分ない。これはお前が使うのか?」
「い、いえ、用途は特に考えてはおりませんでした。ただ 莉菜様の見本になればと思い…!」
政宗の問いに、お晴ちゃんが たどたどしく答える。
あれ?
お晴ちゃん…?
なんだか顔が赤いような……
「なら、この巾着は俺が貰っても問題ないな?」
「え…!」
「ちょうど小銭入れが破れて困ってたんだ。生地の色も柄も俺にぴったりだしな。貰ってくぞ」
「…っ」
お晴ちゃんがまだ何も言葉を発していないにも関わらず、政宗が巾着を懐に仕舞う。
もう、強引だなぁ。
お晴ちゃん、嫌じゃなければ良いけど……
「さて… そろそろ行くか。莉菜、俺にぺろぺろ舐められたくなかったら口の周りのきな粉はちゃんと拭いとけ」
「え、嘘!ついてる!?」
慌てて手拭いを取り出して口を拭う。
「巾着ありがとな、晴」
政宗はゆっくり立ち上がると、最後にお晴ちゃんの頭をクシャッとしてから部屋から出て行った。