第7章 秘密の花園/前編
「ほ、ほんと…?」
「うん、本当」
こうして抱き合ったり こんなことをサラッと言えるような関係になれたことは奇跡としか言いようがない。
だからこそ、嘘偽りない自分の気持ちを余すことなく伝えたいと思う。
「ふふっ」
照れ笑いする莉菜さんの頬に右手を添えた。
「莉菜さん、」
「あ…」
キスをしようと、顔を近付ける。
唇と唇が触れ合う寸前…ーーー
「ちょっとー!莉菜ちゃん、早くお水持って来て頂戴!」
女将さんの大きな声が聞こえ、ピタリと二人の動きが止まる。
「は、はーい!すぐ行きます!」
莉菜さんが後ろを振り返り、店の方に向かって返事をした。
「ごめんね 佐助くん、ママが呼んで……… っ!」
莉菜さんがこちらに向き直った瞬間、
チュッ!と掠め取るように唇を奪う。
「うん、呼ばれてる。引き止めてごめん」
「〜〜〜!佐助くんてばっ」
「クス、…行こうか」
耳まで赤く染まった莉菜さんの代わりに井戸で水を汲み、店内まで運んだ。