第7章 秘密の花園/前編
(ジャー… ジャー…)
店の裏にある井戸で水を汲む莉菜さんに、後ろから声をかける。
「莉菜さん」
「わっ、びっくりした!」
莉菜さんが驚いてこちらを振り向いた。
「佐助くん…」
皆がいる前とは また違う表情で名を呼ばれ、ドキッとする。
二人の距離が自然と近付いて、軽く抱き合った。
「この間の流星群の日は帰りが遅くなったけど、大丈夫だった?」
「うん… 平気だったよ」
「それなら良かった」
「楽しかったね、あの日」
「ああ、かなり」
抱き合ってユラユラと揺れ、小さな声で会話をする。
「次の仕事の休みはいつ?しばらく安土に滞在するから、良かったらどこかでデートしない?」
「デート!?嬉しい…!明後日が休みなの」
「明後日か、分かった。それまでに良いデートスポットを考えておく」
「ありがとう……」
顔を見ないでも莉菜さんが真っ赤になっているのが手に取るように分かる。
俺はあえて身体を離し、まじまじとウェイトレス姿を見つめた。
「ところで莉菜さん。前から思ってたけど… その着物にエプロン姿、すごく可愛いな」
思ったことをストレートに伝える。