第7章 秘密の花園/前編
「佐助。なんなんだ あの女は。もう少し人の話を聞くよう教育し直しておけ」
調子を狂わされた謙信様がイライラを露わにして俺に当たる。
「お言葉ですが謙信様、俺は莉菜さんはあのままが良いと思います」
「そうだぞ謙信。あの子は裏表がなく自由奔放、天真爛漫なところが堪らなく愛らしくて魅力的なんだ」
「…おい、なんで信玄様まで熱弁してんだ。まぁ俺も同感っちゃ同感だけどな」
「チッ、どいつもこいつも…」
謙信様が渋い表情で腕を組む。
ゆっくりでいい、そのうち謙信様にも莉菜さんの魅力を理解してもらえたら。
理解され過ぎても色々困るけど。
そんな事を思っていると莉菜さんが裏口から出て行く姿がチラッと見えた。
「……すみません。食事の前に厠へ行って来ます」
俺は三人に そう断りを入れ、
厠へ行くフリをしてそっと店の裏へ回った。