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混合短編集

第9章 【刀剣乱舞✕東京喰種】よだれ塗れの刀剣は主がお好き


僕は刀剣男士だ、手入れをする力を持たない。叶えてあげたいけれどそれは無理だ。
主なら叶えられる。
ならば、この切実な願いは主に伝えなくてはならない。
不安そうに顔を歪める彼らに一つ頷いてみせ。

「勿論、頼んでみるつもりだよ。このままという訳にはいなかいからね」

直るかどうかは運次第だけどね、と苦笑しながら大倶利伽羅の肩を軽くたたく。
短刀たちは大倶利伽羅や山姥切国広に飛びついて、大粒の涙を声も上げずにこぼす。
大倶利伽羅はくしゃりと顔を顰め左手で口を覆い、ほろほろと涙を流していた。その口元は嬉しいそうに笑っていた。


ーーー


「な、直りそうかい」

恐る恐る主に伝えたところ、「いーよー」の一言だった。
直せるかどうかの確信がないのに言い切るのは、良くも悪くも主の特徴。
大倶利伽羅の依代を散々眺め、近くで待機していたこんのすけの方を見やる。

「ぽこ助ー、ぽんぽん取ってー」
「ですから!こんのすけだと!」
「ねえぽんたん、はーやーくー」
「むぐぐっ」

管狐なのに、まるで人間のように歯噛みするこんのすけに申し訳なさがつのる。
審神者になって結構経つのに、未だこの管狐の名前がこんのすけだと覚えない。

僕の頭痛なんて知らない主は、こんのすけに取ってもらったそれでヒビや欠けているところを撫ぜたり優しく触れたりしている。
が、主の表情は芳しくない。

「んー、直らないなー」

そう言って大倶利伽羅の依代をくるくる回し、なんでだーと首を傾げていた。
まさか、直らないのか。それ程までにあの女審神者の呪(しゅ)が酷いのか。

考えは同じだったらしいこんのすけが主に駆け寄り、不思議そうに右に左に首を傾ける主の顔を見上げた。
ぱちりとこんのすけと目が合った主は、あ!と声を上げると自身の口元に依代を持っていく。

え、あ、まさか。

本当に僕らの主は予想を裏切らない。案の定、赤々とした舌を出し。
事もあろうに抜き身の刀をべろんと舐めた。

「ぎゃー!またですか跡武様!!」
「またかい!主!」

あわあわと主の傍へと駆ける僕らに、ふにゃと笑った主は依代をぐっと突きだし言った。

「直った」



「「え」」
「おーくりから、ピッカピカー」

そう言って掲げられた大倶利伽羅の依代はヒビや刃こぼれなど一切無い、美しい鉄の輝きを放っていた。
ただし主のよだれがべったり付いているけど。
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