第9章 【刀剣乱舞✕東京喰種】よだれ塗れの刀剣は主がお好き
なお、演練中の怪我及び刀剣破壊、破損した刀装に関しましては演練終了後、演練開始前の状態に戻りますのでご安心ください。
ワイヤレスイヤホン、リンクスタート
それではカウントダウンを開始いたします」
長々とした説明を淡々と言い終えると同時にかうんとが始まった。
「かせん、みだれ、ほり、とんぼ、みつただ、いわとーし」
不意に主の声が聞こえ、即座に全員が右耳に配給され装着された通信機器に手を当てた。
我が主の言葉を何一つ聞き漏らさないよう神経を研ぎ澄まして、口を閉ざして。
「ここで見てるから、がんばってね」
何時もの調子で、柔らかな声は僕らの耳を伝って脳へ。
応援してくれている、見ていてくれる。これは、負けるわけにはいかない。
初めての演練に緊張していたが、それも何処へやら。
熱く、燃え滾る何かが込み上げてきた。
「「「承知ッ!!」」」
広い空間に響き渡る程張り上げた声は、揃いの返答は、強い決意の証だ。
ーーー
「あのように応援されたからには、無様に負けられませんな」
穏やかに目を閉じ、くすりと笑う蜻蛉切だけど、負けるつもりは毛頭ないのだろう。再び開くその双眸は闘志に燃えている。
そんな彼のすぐ隣りに立つ燭台切は力強く頷いて同意する。
「どうせなら、かっこよく勝ちたいよね!」
それはいつもの彼の口癖だけど、全員の総意でもある。
かっこよく勝てるかは分からないけど、勝ちたい。主の初めての演練に、勝利という名の華を添えたい。
「のるまは、各自一振り(ひとり)は倒す、だな!」
高らかに笑う岩融の言葉に僅かに表情を歪め、難を示す堀川。
分からなくもない。何せ僕らはそんなに強いという訳じゃないからね。それに。
「相手の練度は僕らを遥かに凌駕します。勝つのはちょっと、いえかなり厳しいかもしれません」
「大丈夫だよ、堀川さん!僕らには“これ”があるでしょ?」
堀川の言葉をばっさり覆した乱が懐から取り出したそれは短刀ほどの大きさで、赤黒い刀身をしている、くいんけ、と呼ばれるもの。
顕現してすぐに主がくれたお守りであり、初めての贈り物だ。