第9章 【刀剣乱舞✕東京喰種】よだれ塗れの刀剣は主がお好き
「ちゃちゃっと済ませて帰ろうよ、歌仙さん」
「そーそー、終わったら約束の新色の爪紅を...っやべ、口が滑った」
軽やかに笑う乱と、あからさまに視線を逸らす加州。
これは僕の心持ちを解そうとしているのかな。
彼らだって腹に据えかねているだろうに、なんだか申し訳ない。
一呼吸置いて少しだけ笑んでみるが、果たして上手く笑えていたかな。
「歌仙君」
少し離れたところにいた燭台切や、彼と話していた堀川らも歩み寄ってきた。その後ろには岩融や蜻蛉切もいる。
その表情は三者三様、苦笑しているにしては殺気立っていた。
「厨担当の僕ら全員来ちゃったから、早く帰らないと準備が大変だよ」
「御手杵さんとか鶴丸さんあたりが問題を起こしてないといいですけどね」
言われて気づいた。そういえばそうだ。
現在僕らの本丸で厨担当は僕、燭台切、堀川。
主のことだ、きっと何も考えずに組んだのだろう。
これは、早く帰らなくては厨の状態が大いに気になる。
よりにもよって、厨破壊の天才ばかり本丸に残っている。
代表格は鶴丸国永。その次は御手杵と薬研。
腹が減ったから何か作ろうと思ったと何度厨を破壊されたことか。いくら悪気がなくとも、丸一日機能しなくなるのだからたまったものじゃない。
「無理、でしょうな」
「がははは!まあ、まず無理だな!」
そのかつての惨状を知っているからこそ。
蜻蛉切はため息に吐きながら、岩融は呆れながら豪快に笑って頷いた。
「ってワケだから!さっさと終わらせよっ」
僕に頷いて見せる六振り(六人)の目は、決意と怒りを湛えていた。
満面の笑みを向ける乱ですら殺気を抑えきれていない。
幸いにも、あの陰口を言っていた審神者と当たっている。
これは憂さ晴らしをしないわけには行くまい。
ーーー
主の近侍を任された加州と別れ、呼ばれた組み合わせで一つの部屋へと通された。そこからさらに別室へと進むと、進んだ先でひどく広い木々の生い茂る空間へと出た。
奥の方はぼんやりと霧が出ており、つまりここが演練という名の合戦場だ。
足を進めると突然、大音量であなうんすが入った。
「演練開始の合図はこの放送終了から30秒後です。演練開始と同時に審神者との回線が遮断されます。どちらかの全刀剣が戦線崩壊するまで回線が開通することはありませんので、作戦会議を済ませておくことを推奨します。